長期、好評連載中メールマガジン「コーヒーの達人への道」のバックナンバーです。
コーヒーの達人への道 バックナンバー 2009年11月
2009年11月号 下旬 No.168
希少なモカコーヒーを入荷。残留農薬問題を考える
今年は紅葉の時期が早かったですね。こちら中部でも紅葉した葉が地面に散って絨毯のようになっています。
早めの冬支度が必要かもしれませんね。
冬は本当にホットコーヒーが美味しくなります。特に濃いめに入れてミルクをたっぷりで頂くと心も体も温まります。
あなたはどんな銘柄のコーヒーがお好みですか?ブレンド?ストレート?
ブレンドの一部として良質の酸味のもとになるエチオピアのモカが残留農薬の問題で輸入が止まってから一年以上が経ちました。
またモカ・マタリとして人気のあるイエメンのモカも輸入が止まっていました。
このたびほんの少しですがエチオピアとイエメンのモカが輸入されました。勿論残留農薬の問題をクリアーし、
最近輸入されたた新しいものです。
そもそもこの残留農薬の問題ですが、輸入される食品にはその種別ごとに残留農薬に基準が設けらてており、
日本のその基準は欧米各国から見てもかなりハードルが高いものです。日本人が農薬問題に敏感であることも影響していると思われます。
この食品の種別は、すべての輸入食品個別にそれぞれ摂取の状況により基準があるかというとそうでもなく、
ものによっては品名ごとにあるものもあれば、大きくあれもこれも入れてひとくくりの場合もあります。
コーヒー豆はどうかというとひとくくりの方に分類されるため、本来加工方法の違ったものと同じ扱いをされています。
それらの食品の同一の基準が適用されます。
今回コーヒー豆から検出された残留農薬「ヘプタクロル」は0.04ppm〜0.14ppmでした。その他の食品群は
0.01ppm以上が検出されると違反になるので、エチオピア産のコーヒー豆は輸入が許可されませんでした。
最近は有機栽培や無農薬栽培の野菜や果物が人気です。トレーサビリティーでいつどんな農薬をどのくらい使用したのかが
簡単にわかる仕組みも出来上がっています。農薬は使わないに越したことはありません。
でも、完全に農薬を使わないで野菜などを栽培するという事は大変な人手と時間がかかります。
少しでも安い品を求める一方で、手間とお金がかかる無農薬の商品を要求する。ちょっと矛盾していると思いませんか。
基準以下だから安心と基準以上だから危険の不思議!
実は今回違法となった0.04ppm〜0.14ppmについてなのですが、皆さんがよくそのままで口にするある食品の同じ
「ヘプタクロル」の残留農薬の基準はなんと10ppmです。これはそのまま口にして食べる食品です。
それに対しコーヒーの生豆はそのまま口にしてポリポリと食べるものではありません。
しかも、この「ヘプタクロル」は高熱に弱く、焙煎をすることによってほとんど無くなってしまいます。
しかも水に溶けにくいので熱湯で抽出するコーヒーの液体に含まれる恐れのある量というのは、
ほとんど無いに近いと言っていいかもしれません。
こんなわけで日本では許可されなかったエチオピアのコーヒー豆は外国で焙煎されれば
同じ量の残留農薬があった豆でも日本での輸入が許可されるということになるのです。
そして別の食品ではそのまま食するにもかかわらずコーヒー生豆の250倍〜70倍もの「ヘプタクロル」が
検出されたとしても輸入が許可されるのです。この基準ちょっとおかしいと思いませんか?
エチオピアとしてはこんなに基準が違っている日本に無理して買ってもらわなくても他の国で買ってもらえますから、
日本で買ってくれなくて結構ということになるのです。焙煎したてのコーヒーの美味しさを考えると何とも残念なことです。
もちろん日本側でも残留農薬の自主検査などの方法を検討していますし、エチオピアに対しても使用農薬を減らす努力を
お願いしています。
農薬は使わないに越したことはありません。そして法律はたとえ不合理と思っても守らなければなりません。
一人ひとりが自分のしっかりした判断を持っていたいものです。
さて、今回しっかりと基準をクリアーしたエチオピア産とイエメン産のモカコーヒーが入荷しました。
皆様に安心して召し上がっていただけるコーヒーです。
入荷量が少なく、申し訳ございませんが限定での販売となります。お早めにお求めくださるようご案内申し上げます。
2009年11月号 上旬 No.167
もう一人のコーヒー好きの音楽家、ベートーヴェン
11月に入って秋もすっかり本番ですね。紅葉は一日の温度差が大きいほど色鮮やかになるそうです。
さて、今年の紅葉は如何でしょうか。平地の紅葉は現在、東北地方を南下中のようです。皆さんのお近くはいつ頃になるでしょうね。
さて、前回芸術の秋という事で、バッハのコーヒーカンタータについてお話をしましたが、ついでにもう一人コーヒー好きの音楽家を
ご紹介しておきましょう。それはベートーヴェン(1770〜1827)です。
皆さんも彼の作品はいくつもご存じのことと思います。もうすぐ年末。特に日本ではこの年末に多くの団体が
「交響曲第9番の歓喜の歌」を合唱しますよね。
彼は大変なコーヒー好きでした。彼は新式のガラスのコーヒー沸かしを持っていて、きっかり16粒を数え
毎日コーヒーを飲んでいたそうです。そして彼の朝食はコーヒーだけだったとか。
ベートーヴェンについて書かれている書物のなかに、彼の部屋はとても乱雑で床には楽譜やお金、衣装が散乱していて、
ベットには洗濯物が山のように積まれ、家具もほこりや厚く積もっていたが、テーブルの上にはコーヒー沸かしが置いてあったと
後輩の作曲家ウェーバーが語っていたと述べられています。
コーヒーを飲みながら散らかった部屋で髪の毛をクシャクシャにして作曲している彼が目に浮かぶようですね。
彼がいたウィーンには17世紀の頃、進軍してきたトルコ軍が敗退するときに置いていったのが、
ヨーロッパにコーヒーが入った始まりといわれています。
トルコ軍は戦をするときには軍楽隊を先頭にして勇ましい音楽を演奏しながら進軍する決まりでした。
その時のトルコの軍楽隊の行進曲がベートーヴェンの作曲した有名なトルコ行進曲に繋がったのかもしれません。
皆さんもこの曲はよくご存じですね。
芸術の秋。たまにはクラシック音楽を聴きながら美味しいコーヒーのひと時を過ごしてみませんか。